【家族心理学研究者の第一人者にインタビュー】

aibasachiko

母子相談室 カウンセリングルーム みみずく

相場幸子先生

インタビュアー 飯野 嘉浩

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

 


 

①先生の研究テーマはなんですか?

今は大学も離れ、細々と臨床をやって居るだけなので、研究と聞かれるとちょっと恥ずかしいです。出発が家裁調査官だったので、少年非行の研究を一寸やりました。大学で教え始めた途中から発達障害児の療育と母親支援に関わりました。その後,児童虐待の問題が気になり、電話相談に加わって居るうちに、虐待問題は母親支援を中心に考えなければいけないと痛感しました。それで子育て相談をメインにした今の相談室を立ち上げました。今から12,3年前の事です。ちょうどその頃ソリューション・フォーカスト・アプローチと出会ったのですが、この技法が踏み切る自信を与えてくれました。

今はソリューションの勉強会や講座、研修をやることと、相談室の臨床活動の二つを同じ位の比重で考えています。

ソリューション・フォーカスト・アプローチは,心理臨床学会の中で長谷川啓三先生の家族療法ワークショップで初めてその存在を知りました。その翌年の家族療法学会(多分)で森俊夫先生と田中ひなこ先生の事例発表を聞き、さらに興味がわきました。

②ソリューションアプローチに惹かれた理由は?

最初に惹かれたのは、絶対クライアントを責めないところですかね。家族も責めないから母親支援をする上でやりやすいということです。子どもの問題で原因追究をすると、責めるつもりでなくても、親は責められたと感じ苦しくなります。「子育てに失敗した」と自責感を持って相談にくる親が殆どですから。原因を探らず、生育史も追求せず、解決を未来に構築して行く所がステキだと感じました。問題をほじくり出す代わりに、リソース、つまり良い所、出来ている所を探して発見し、拡大して行くんですから、相手も自分も楽になります。分析派の人が時に陥り易い、問題を探り出そうと深く突っ込むような態度に疑問を感じていたので、そんなことをしなくても、と言うよりしない方がずっと早く、まっすぐ解決に進めるというのは、目からウロコでした。

それと、ソリューションの面接は構造がしっかりしていて、休憩をはさんでフィードバック・メッセージを出します。これでいわゆる聴きっ放しではなく、面接をきちんと締めくくる事ができます。アドバイスではなく、クライエントが語ったことをまとめて返すのですが、クライエントは納得して自分のペースで進んで行かれます。

③先生の師匠はどなたでしょうか?

師匠と言えばインスーしかありません。そのインスーに導いて下さった最初の方が長谷川先生です。今お話ししたワークショップの時に『解決のための面接技法』の翻訳者の玉真愼子先生にお会いしたんです。福岡の磯貝希久子先生の所でインスーのワークショップがあることを教えて頂き、それから殆ど毎年、インスーの来日の度に参加して勉強しました。また、磯貝先生と原口葉一郎先生が福岡で開いていらした研修にも何度か参加しました。ですから、日本人のソリューションの先生はこの4人と言う事になりますね。

福岡のワークショップに偶然札幌から3人も参加していたんですね。それで札幌でも勉強会をやろうと計画して、始めたのがたしか1999年でした。3人のうちの一人はその前にヨーロッパでインスーとスティーヴ・ディシェイザーが開いた2週間のワークショップにも参加していたんです。勉強会では磯貝先生や玉真先生をお呼びしたりもしましたが、自分たちでヴィデオを見たり、ロールプレイをして勉強しました。

2003年にブリーフサイコセラピー学会が札幌で行われ、実行委員の一人だったのを幸いに、特別講演にインスーを招待しました。学会の翌日は私たちの会主催でインスーのワークショップも行いました。お礼に少しでも楽しんで頂こうと、ポロトコタンというアイヌ民族博物館にご案内したところ大変な興味を示されました。アメリカでも少数民族の問題と関わって居たので、特に関心が深かったようです。何にでも興味を持って質問され、"I'm curious, I'm curious" (面白いわね、興味があるわ)を連発してました。ソリューションでは[相手に好奇心を持ちなさい]とか『解決への好奇心』と言いますが、さすが,インスーの好奇心は凄かったです。

2004年には、ウィスコンシン大学のオンラインコースで、ウェブ上ですが、インスーから直接指導を受ける事が出来たのも幸いでした。

④ソリューションアプローチを理解するためにはどうしたらいいでしょうか?

私たちの中では,インスーとピーターの『解決のための面接技法』をバイブルと呼んでいます。それをしっかり読めばソリューションがどんなものかは、大体理解できると思います。でも、本だけでは限界があるのでワークショップや研修にぜひ参加される事をお勧めします。残念ながらインスーもスティーヴも、もうこの世にはいらっしゃらないのですが、お二人の面接のヴィデオ、DVDがかなり残って居ますから、それらを見るのも役に立ちます。

面接は技術ですから理解するだけでなく、繰り返し練習する事が大切です。私たちもそのために毎月勉強会をやって居ますし、入門講座、実践講座なども定期的に開いています。勉強会は大体事例のロールプレイか、ワークをやります。講座では短い講義とワークを交互に挟んで行きます。実践講座は6回位のシリーズで最終回には長い面接がきちんとできるようにしています。各地にそのような場所や催しがあると思うので、それぞれやり方はいろいろと思いますがぜひ足を運んで頂きたいです。

また年1回全国持ち回りで、ソリューションランドと言うお祭りのような楽しい勉強会もあります。

⑤先生の気になる社会問題はなんでしょうか?

やっぱり虐待でしょうか。世間ではまだ「悪い親の手から子どもを救い出せ」みたいに考えている人も居るかもしれませんが、それでは絶対子どもを幸せにできないんです。虐待している親に愛情がないかと言うと、そうではないんですね。愛情があって子どもをこんな風に育てたいという理想があって、それが思い通りに行かないと暴力をふるってしまう例も多いです。一人で子どもを抱えている,自分が親から愛情を貰えなかったので育て方がわからない、経済的問題、そのほかいろいろな場合がありますが、虐待する親は例外なく不幸で、たくさんの悩みを抱えている人たちです。そして、親族や地域から孤立しています。それなのに周りが手を差し伸べる事もせず、母親1人に育児を押しつけていたら、虐待が無くなる訳はありません。

そんなお母さんでもその人なりにいろいろ努力し、頑張って居ます。少なくとも始めはみんなそうなんです。そんな時期に誰かが手を差し伸べ、寄り添ってその頑張りを認め、応援して行く事が大切なんですよね。そして是非、仲間とつなげてあげたいです。グループでは皆さんとても生き生きとお話しされています。

⑥ソリューションアプローチを学びたい学生に一言お願いします

本で学ぶだけでなく足を運んで講演やワークショップに参加することです。ロールプレイでクライアント役をやると学ぶものが多いと思います。

⑦先生のお勧めの本を教えてください

先ほど言いました,『解決のための面接技法―ソリューション・フォーカスト・アプローチの手引き』第3版(インスー・キム・バーグ&ピーター・ディヤング著 玉真愼子他訳 金剛出版)が定番です。

私たちの研究会の本『みんな元気になる~対人援助のための面接法~解決志向アプローチへの招待(金剛出版)』も気楽に読めて役に立つと思います。

ヴィデオ、DVDの日本語訳はカウンセリングSoFT(高松市丸の内10-27)が多く出して居ます。

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