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家族心理学会 2008・学会速報
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日本家族心理学会第
25
回大会が、東北工業大学・仙台国際センターにて開催されました。
家族心理学・家族療法にアイデンティティをもつ研究者・臨床家が研究発表やディスカッションを行いました。
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2008年8月22・24日 (東北工業大学)23日(仙台国際センター)
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大会テーマ 『 響き合う家族力と地域力
〜家族援助のための専門職コラボレーション〜 』
【大会記念講演
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テーマ:いじめ・虐待に対して家族の出来ること
」
講 師:ピーター・スミス(ロンドン大学ゴールドスミス校心理学部教授)
要旨:ロンドン大学の心理学部教授であり、学校・家庭研究室の所長であるピーター・スミス教授より、「いじめ研究」と「家族研究」の報告。教授は、英国だけでなく欧州、日本でもいじめ解決モデルとして活用されている「シェフィールド方式」を開発された。
いじめ問題に関して、近年1997〜2001年にかけてEUと連携し、TMR(Training&Mobility of Researchers)プロジェクトを立ち上げ、各国の研究協力者とともに、いじめ防止に関する大規模調査を行う。今回は調査の概要の報告を行った。
【大学院生・研究生がレポート
家族心理学会イチオシ発表&シンポジウム!
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【レポーター 閏間 理絵 立正大学大学院】
大会記念講演「いじめ・虐待に対して家族の出来ること」
講師:ピーター・スミス 司会:米川文雄 皆川州正 通訳:金網知征
日本家族心理学会発表論文集 p.24
ピーター・スミス先生の講演では、西洋、特にイギリスにおけるいじめについて、その現状や生起してしまう要因・いじめに対してできることなどを詳しく聞くことができ、とても勉強になりました。いじめについては、日本でもとても深刻な問題だと思います。今回そのいじめについてイギリスの現状や、その生起要因・援助に関する理論などを知ることができました。イギリスでは、日本と同様にいじめが原因による自殺が問題となっており、その生起要因は個人の特性や性格をはじめ家族関係や養育態度との関連など多くの研究があるそうです。またイギリスではいじめの生起要因に人種や文化なども影響していると述べられていました。日本とはまた違ういじめについての概念があり、またそのいじめに対する援助の理論も初めて聞く理論もあったので、とても興味深いと同時に勉強していこうと思いました。
【レポーター 下川恵 駒沢女子大学大学院】
ワークショップ「統合的カップルセラピー」
講師:野末武義
日本家族心理学会発表論文集 p.22
まず、カップルを理解し援助するための基本的な考え方の紹介がなされました。カップルセラピーでは、夫婦それぞれの心理的世界の他にも、コミュニケーションの取り方やそれぞれが育ってきた源家族での過程など、さまざまな経験が絡み合ってきます。また、ジェンダーの視点も必要であり、それぞれの情報を統合的に扱う必要があるというお話でした。セラピーにおいて気をつける点は細部にまで渡り、細心の注意が必要になるなと感じました。しかしながら、カップルセラピーの難しいところは、2人のバランスを取りながら、セラピストが中立的に関わっていくところだなと感じました。
後半は、浮気の問題を扱うビデオを見た後で、5〜6人のグループで話し合いをした。浮気というトピックなので、どうしても妻が夫を責めるような発言もありましたが、それに対して深く扱うのではなく、違うトピック(たとえば夫婦のお互いへの関わり方)と浮気という夫婦の問題をうまく関連させて進めて行ったのが印象的でした。多くのグループが話が盛り上がり、時間も延長しました。カップル同士が一緒に来談するセッションは、パートナーが聞いていることで、話せないことが多くなるのではないかと思っていましたが、パートナーが聞いているという部分を利用してセラピーを進めるという野末先生のお話には大変感服いたしました。
【レポーター 山本喜則】
ワークショップ「新しいケース検討法:ツイン・リフレクティング・プロセス」
講師:三澤文紀
日本家族心理学会発表論文集 p.23
まず始めに、Andersenによるリフレクティング・プロセスについての説明とケース検討方法の概要やリフレクションの際の注意点が説明されました。面接とチームによるリフレクションが交互に行われる中で、介入するわけでなくチームの意見を聞かせるだけで変化していくというナラティブなアプローチであること。特にスーパーバイズとしてのトレーニングでリフレクティング・プロセスが有効であるとの経験から、さらに発展させたツイン・リフレクティング・プロセスの紹介がなされました。これまでと同様に”相談者”に役立つような面接内容についてリフレクティングを行うチームαに、”面接者”の進め方や話す内容などに注意するチームβのリフレクションが加わることによって、相談者へのフィードバックだけでなく、相談者にとってもメリットの大きいプロセスであると感じました。
後半、実際に参加者によるセッションが実施された中で感じたことは、面接内容についてチームαがリフレクションした後で、相談者が一度席をはずして面接者についてチームβが話し合う時間が取られることによって、その後に再開される面接で飛躍的な変化が見られたことを実感してとても驚きを感じました。セッション終了後の相談者からのシェアリングで、チームαのリフレクションを聞いていろいろと考えたことについて、チームβの間、席をはずすことで頭の整理ができてよかったとの感想が述べられなるほどと思いました。チームβのリフレクティングは面接者の助けになるだけでなく、相談者の内的対話の猶予として働くことがとても理に適っているなと実感できました。
【レポーター 高橋誠 武蔵野大学心理臨床センター】
自主シンポジウム「家族イメージ法(FIT)の新たなひろがり」
司会者:森裕子、話題提供者・企画者:山本喜則、話題提供者:永井めぐみ、指定討論者:相模健人
日本家族心理学会発表論文集 p.120
家族イメージ法(FIT)を用いた事例の紹介と、新たに開発されたFITの電子版についての紹介がされました。さいたま市こころの健康センターの永井めぐみ先生は、多問題家族の家族心理教育のプログラムの始めと終わりにFITを使用し、FITが自身の家族を客観的にみれるツールとなること、さらにFITを名刺代わりに活用することで、家族グループ内のコミュニケーションを促し、グループ心理教育の効果を促進するといった興味深い発表をされました。無論、FITの提示に関しては十分な倫理的な配慮がなされています。私自身も、面接場面でFITが家族コミュニケーションを促すのを見たことがありますが、家族心理教育グループというさらに大きな集団のコミュニケーションを促進したという点で興味深い発表でした。
次に、山本喜則先生より、FITの電子版の開発と、PCで操作可能なFITの長短について説明された。この電子版FITは、簡単なマウスクリックと操作でだれもが活用でき、かつメールに添付して送付することが可能。さらに、作成し終わるとワンクリックで数値データを算出もできます。家族関係を測定する際に、FITは勢力、関係性、距離感などを測定できるうえで非常に有効なツールだと思っていましたが、これまでは数値化に非常に手間のかかり大規模調査には不向きにも思われました。ですが電子版FITの登場によって、家族イメージの測定と数値化が比較的容易になりましたので、今後さまざまな研究応用が可能と思われ、筆者の家族研究にも応用したいと思いました。また、メールに添付して送ることができる電子版FITは、不登校など本人がカウンセリングに来れないような事例でも活用できるため、使い方によっては有効な臨床ツールにもなりえるとも思いました。
本発表はFITのさらなる広がりを予感させるもので、家族臨床家、家族研究者を目指す私にとってもとても刺激となる発表でした。
【レポーター 山本喜則】
口頭発表「過適応児に対するナラティブアプローチ−「良いこと探し」で物語をつむぐ−」
発表者:駒場優子
日本家族心理学会発表論文集 p.64,65
がんばっているけれど周りとうまくいかなくなって自信をなくしてしまった子についての事例が紹介された。「いいことは何もない」という生活のある面に拘束された状態から、面接者と一緒に”いいこと探し”ノートにちょっとしたうれしくなったことを書いていくことで解決のきっかけが生まれた事例であった。
面接者も一緒にそれぞれ自分にとっての”いいこと探し”をする共同作業を通じて、面接での介入ではなく、面接者のノートに書いてあった”いいこと”をきっかけにして、相談者なりの”いいこと”という新たな物語を作り出されていく過程はとても興味深かった。
口頭発表「カップルの問題言及場面におけるときめき行為の効果に関する臨床心理学的研究〜ときめきの語用論〜」
発表者:坂口由佳、石井宏祐
日本家族心理学会発表論文集 p.68,69
本研究は、ときめきを対人システムに対して求心的作用を及ぼすメッセージとして捉え、恋愛関係にあるカップルにおける葛藤的会話システムに与える影響について検討したものである。
方法としては、統制条件(雑談)、問題条件(問題について話し合う)、ときめき条件(問題会話中に一方が相手をときめかせる)の3条件の会話をVTR撮影し、会話ストレス度と問題解決度について測定された。結果として、問題条件に比べときめき条件の方が問題解決度は高く、会話ストレス度については有意な差は見られなかった。また求心的コミュニケーションの増加は笑顔のみ有意差がみられた。
筆者らが述べるようにときめきによりストレスを増やすことなく問題解決への良い変化を及ぼす可能性が示唆されたことは意義深い。しかしながら、ときめきの指標や笑顔表情の自己制御性と快感情という両面性をどう捉えるかなどより詳細な検討が望まれる。
口頭発表「心を”くすぐる”コンプリメントによる居心地認知の変化に関する研究〜介入としての”くすぐり”の可能性をさぐる〜」
発表者:丸田なつき、石井宏祐
日本家族心理学会発表論文集 p.70,71
本研究では、落語で使われる”くすぐり”を臨床的にとらえ、居心地の認知や問題の捉え方への影響について質問紙調査により検討している。
方法として、居心地の悪い状況設定の説明とその状況での心をくすぐる言葉かけを受けたと想定して、居心地、問題認知の変化、くすぐられ感について測定された。くすぐられ尺度は因子分析後にくすぐられ群と対照群に群分けされ、居心地認知と問題認知の変化の因子分析結果を従属変数とした群間比較が行われた。結果として、居心地認知および問題認知の変化とも対照群に比べてくすぐられ群の方が有意によい結果となった。
特筆すべき点は、くすぐりをリフレーム、コンプリメント、ユーモアという3つの要素を併せ持つものと捉え、これらがシステミックに作用することが認知作用に大きな影響を与える可能性を示唆している点である。今後は、くすぐりについてのより詳細な作用についての検討や、コミュニケーション場面での実証的な研究を期待したい。